三重県小児科医会
Mie Pediatric Association
2024.06.26  更新

「食物アレルギーの診療の手引き2023」と「食物経口負荷試験の手引き2023」の公開について

 
2024年3月に、「食物アレルギーの診療の手引き2023」(以下2020)と「食物経口負荷試験の手引き2023」(以下2023)が食物アレルギー研究会等のウェブサイトで公開されています。これらの手引きは、日常診療に直結する部分が凝縮されて、かつ無料でウェブサイトから入手できますので、気軽にご一読いただけます。

手引きは、いずれも2020年の改訂版になりますので、改訂点についていくつかご紹介します。
まず、負荷試験を行うときの総負荷量についてです。牛乳は特異的IgE抗体価が低値でも重篤な症状を起こすときがあるため、より慎重な目安になりました。

また、2020ではIgEが関与する即時型食物アレルギーを中心とした経口負荷試験についての記載でしたが、2023では即時型症状以外の負荷試験として、食物依存性運動誘発アナフィラキシーや、食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES)についても述べられています。FPIESは、乳児が離乳食(卵黄が多い)を摂取して、最初は大丈夫だったのに何回かすすめていくうちにある日突然頻回の嘔吐があってぐったりし、採血したら、特異的IgE抗体検査は陰性であることが多い、といったものです。摂取後時間が経ってから症状が出現するため、6時間は慎重に経過観察することになっており、時に強い症状も出現するため慎重に行う必要がある検査になります。

食物アレルギー診療の手引きの方では、さらにアナフィラキシー発症時の初期対応がアナフィラキシーガイドライン2022のアップデートに準じて改訂されているなど、日常診療でのポイントなどがアップデートされています。

内容の充実度としては、日本小児アレルギー学会から発刊されています「食物アレルギー診療ガイドライン2021」の方が詳細に記載されています。教科書としての役割だけではなく、クリニカルクエスチョンをたてて、システマティックレビューも行われているなど学問的にも最新の食物アレルギーに関する情報が載っていますので、物足りない部分については、ガイドラインをご参照ください。
 
 
 
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